
N˚001
斉藤アイさん インタビュー編 第2話
暑さ寒さも厳しいけれど
海・山・里の幸に恵まれた北陸で
「わたしらしく」暮らしている
魅力的な女性に会いに行きました。
女優を目指していた20代を経て、ヨガと出会い、結婚を機に福井県大野市へ。
大野のお魚処“うおまさカフェ”にはよく訪れるそう。
1981年6月20日うまれ 岡山県出身
斉藤アイさん カタログ編
第1話「女優になるんだ!」
第2話「つるつるぴかぴかだったから」
第4話「究極のオーガニック」

第2話「インドで怒り大爆発」
———さて、前回「衝撃的なことが多かった」とおっしゃってましたが、
どんなことがアイさんのまわりで起こりましたか?
自分の「怒り」を突かれるような…、怒りの感情を引き出されることが多く起こりましたね。
わたしの中にこんなに怒りがあったんだ! わたしこんなに怒ってる! どうしよう! どうすればいいんだ!みたいな状態が訪れたんです。
で、インドに行ったとき、それが爆発したんです、インド人に対して。
いいかげんにしろー!! おりゃー!!って、ちゃぶ台ひっくり返したくなるみたいな。笑
———どうしてそんなことに?
まず、飛行機が飛ばないんですよ。日本に帰る飛行機に乗り継げなくなる。
なのに、誰も怒らないんですよ。誰も責任とろうとしない。
そんなインド人にキレたんです。
そうこうしてたら、ビザも切れて。
ビザが切れるとホテルにも泊まれないんですよ。
必死で空港の人に訴えたら、インドの航空会社の人がわたしの襟首をもって連れ回すんですよ、
モノみたいに。扱いがひどいんです。笑
でも、その人のおかげでホテルはとれたんですけどね。
あと、ビザを延長するためだけにタクシーで町まで行ったら、そのオフィスが休みだったり…!
そこでまたドッカーン!! って、怒り爆発。笑
そんなことしてたら、月に一度のお役目がきて、あー、ナプキン持ってきてないし、どうしよー、タクシーの運転手さんになんて言えばいいかわかんないし…。
それで、とりあえず「わたし Women! Women! Month! Woman!」って、とっさに出てくる単語で伝えたんです。
———大変でしたね!
ショッピングセンターに連れてってと言ってるのに、観光客用のモールに連れて行かれて、高いもの売りつけられるんですよ、ストールとか。
ストールとか、ストールとか…、もうストールしかないくらいの勢いで。
そこじゃない! ちがう! Women! Month! One!
———女性、月、1回。笑
それでようやく露天バザールみたいなところに連れて行ってくれて買うことができたんですけど。
———よかった!笑
今までぜんぜん怒らずに生きてきたのに、インド人が怒らせてくれたというか。
———インド人は怒らせる天才?
たぶん! インド人、すぐ怒るんですよ、相手も怒らせるんですけどね。
怒って怒らせて、というのが平気なんです。日本人は、そういうとこないですからね。
———ないないない。
今までわたしはたくさんの怒りを抑えてきたんだなと実感して、それから怒れるようになりました。
———インドから帰ってきて怒りをストレートに出せるようになったということ?
ストレートにぶつける前にまず怒りを感じられるようになりました。
前は「ダメ、そんなに怒っちゃダメ」って母親のように「そんなに怒っちゃあかんよ〜」と自分をなだめてたのが、わたし怒ってるんだな、怒って当然だ! というふうに、受け止めてあげられる自分が育ってきたかな。
———出てきた怒りは言葉にして伝えてる?
そうですね。
冷静に言葉にできるようになりました。なんで怒ってるのかとか。
それが実は、そのときだけのことじゃなくて2年前に遡って、ここであれがこうなって、だから今ここで怒ってるんだなと分かるようになりましたね。
ま、おもに旦那さんに向けての怒りなんですけど。笑
———それってヨガとインドのおかげ?
そうですね
ヨガは精神的にも影響を与えてる感じがしますね。
———そういえば、沖縄には何年くらい滞在してましたか?
2年いました。
最初の半年間はリゾートバイトをして、あとの一年半は那覇で「うたしゃー」の人に弟子入りして、三線(さんしん)を習いながら民謡酒場で働いてました。
那覇はおもしろいですねぇー、沖縄民謡でお店ができちゃうんですよ!
———沖縄らしく閉店の時間になったらカチャーシーで締めるの?
そう! 毎日それで締める!
———歌って弾ける店員さんだったんですね!
いや、入った当時は、ほとんどなにもできなかった。
なのに「働きたい」と言ったら「いいよ」って。笑
お客さんから「アイちゃーん」て呼ばれたら1〜2曲唄う。
それで披露はおしまい。
あとはまたお運びさん。
で、さいごのカチャーシーになったら盛り上げ役でみんなといっしょに踊る!
———おもしろそう!
おもしろかった! でもきつかったー。
終わると深夜2時。
それから飲みに行ってましたけどね。
帰ってきたら朝8時。笑
若いからできたことかも。
最近はもうお酒飲んだ翌日がしんどい。笑
———三十路を超えるとね。
抜けきらなーい!笑
———2年の沖縄生活を終えてどうでしたか?
そのころはだいぶキズが癒えてて、沖縄でひとり暮らしもして自分の世界が広がった気がしました。
今までミュージカル一直線だったんですけど、沖縄では自由だったし。
なにか突破できなかったところを突破できたような気がしました。
24〜5歳ってそういう時期なんでしょうね。
———ヨガのインストラクターになろうと思ったのはどうして?
那覇にいたとき、ヨガスタジオにも通い始めて、ヨガでつながる友達ができたことや、その人たちとヨガを通してつながれてることが楽しくて。
東京に戻って1年くらい悩んで、それからインストラクターになろうと決心して、さらに1年くらい勉強して資格を取りました。
———迷っているあいだはどんなふうに過ごしてましたか?
ヨガにつながるなにかがしたかったので、「ブラウンライスカフェ」というところで働いてました。
オーガニックとか玄米とかホールフードのカフェだったですが、それはそれで食の勉強になりました。
———福井に来たのは結婚がきっかけでしたよね?
どうして東京に住んでいたのに、大野の山奥の住職さんと結婚に?
たまたま友達をたずねて大野へ来たら、未来の旦那さまがお寺に…。
まだ住職ではなかった旦那さんと大野で出会うわけですが、
その当時のアイさんは尼さんになりたかったんだとか。
大野の人と人がつないだ、ふたりのご縁。
次回は福井に来ることになったきっかけ、結婚のこと、
「つるつるぴかぴかだったから」をお届けします。
おたのしみに。
取材・文:吉田知奈(あわら市出身)写真:前田 龍央(福井市出身)
斉藤アイさん カタログ編
第1話「女優になるんだ!」
第3話「つるつるぴかぴかだったから」
第4話「究極のオーガニック」