
N˚001
斉藤アイさん インタビュー編 第1話
雪も降る。雨も降るし、どんよりしたくもり空が一年の半分くらいを占める北陸。
だけど、海の幸、山の幸のおいしい食材が豊富で、温泉もあり、全国からたくさんの人が旅先にするほど素敵な場所。
そんな北陸に暮らす魅力的な女性のライフワークに触れながら、Sympaオリジナルファッションブランド「cinq symphonie(サンク サンフォニー)」を着て、その方の愛する場所へ連れていってもらいました。
第1回ゲスト:斉藤アイさん
フリーヨガインストラクター
1981年6月20日うまれ
岡山県にうまれ、高校卒業と同時に上京。
女優を目指していた20代を経て、ヨガの道へ。
2012年、結婚をきっかけに福井に移住。
嫁ぎ先は、福井県大野市の山奥にあるお寺。
過去の自分を冷静に見れる今、「私っておもしろいなぁ笑」と楽しそうにお話しを聞かせてくれました。
斉藤アイさん カタログ編
第2話「インドで怒り大爆発」
第3話「つるつるぴかぴかだったから」
第4話「究極のオーガニック」

第1話「女優になるんだ!」
———アイさん、こんにちは! 今日はよろしくお願いします。
こんにちは。よろしくお願いします。
———高校卒業後、上京されたそうですが、大学生になられたんですか?
いいえ、父が単身赴任をしていたので、そこへ転がり込んだんですけど、それが… ミュージカルの住人になるんだ! 女優になるんだ! わたしには舞台しかない! ラララ〜♪ って、ミュージカル女優になろうと思っていたんです。
———そうなんですか! 岡山にいるときから活動されてたんですか?
宝塚に入りたかったんです、高校生のころ。
中学卒業から試験を受けられるので、高校卒業までのあいだに3回受けたんですが、ことごとく落ちて。笑
3回目であきらめたんです。
受かるわけないですよね、今思えば。
———いやいや、それは分からないですよ。
受からなくって傷ついてたんですよ、あの頃のわたし。
ずっと挫折続きで、なんかこう燃え尽き症候群のような…そんな状態で高校3年生を過ごして。
そうこうするうちに、やっぱりあの頃みたいにもう一度燃え上がりたい!
という気持ちがわき上がってきて、それで、東京でミュージカル女優になろうと思ったんです。
———なるほど! 役を演じることに興味があったんですか?
そうですね、舞台という異空間にいることに幸せを感じてたのかも。
———東京でミュージカル活動はどれくらい?
5年くらいやってましたね。食えない劇団でしたけどね…笑
———どんな役が多かったですか?
けっこう正統派なヒロイン系の役をもらえてました。
今は、ちょっと違うんでしょうけど、あの頃は癒し系のキャラクターだったんですよ。
広末涼子さんが全盛期の時代で、そんな感じの存在でしたね。笑
おとなしかったー。
———今も癒し系ですよ。
人をホッとさせる空気感とか。癒しの方向がちょっと変わってきたんでしょうね。
そうそうそう!色がついてきた。
———色とは?
いろもの女優みたいな。笑
東京でがんばっていた頃の私は無色透明だった気がする。
今も透明を目指しているんですけど…
———おとなになると、どうしても付いてきちゃうのかもしれないですね、色。
私の印象では、アイさんはみどりとか藍色っぽい感じを受けます。
ああ! 藍色!
最近、藍色の服をよく着るようになりました。
インディゴブルー。
———今回着たcinq symphonieの服にも藍色がありましたね。とてもよく似合ってました!
ありがとうございます〜!
好きなんです、インディゴブルー。
みどりも似合うって言ってくれたじゃないですか?
実は、みどりがいちばん好きな色なんです!
森のみどり色。
———このスカートのような色?
はい。
こんな色のかばんも持っているし。
好きな色のものって、身につけたくなりますね。
———そういえば、沖縄に住んでいたこともあったんですよね。どうして沖縄に?
東京がいやになったというか、疲れたんですね東京に。
自分が何者だかわからない…
ミュージカルって、きらびやかな「みせる」世界だから、どういうふうに見られてるんだろう?と追求しすぎて、そこばっかりがんばって…、
ほんとうの自分がわからなくなっていたんでしょうね。
———いろんな役を演じて、役の中の「私」はいるけど「ほんとうの私」は何が好きで、何がしたいんだろう…?
と、なったわけですね。
そうです。
あるとき、あたらしいCDを買おうと思って、CD屋さんへ行ったんですけどね。どんな音楽が好きだったかわかんなくなって、
なにを買ったらいいかわからなくて、2時間くらいCD屋さんぐるぐる回ってました。笑
「わたしはいったいなにが好きだったんだろう」って。
それが、なんだか悲しくって。
ちょうどその頃、ヨガを初めていたんです。
雑誌をひらけばヨガ特集があるようなブームの時期だったのでスタジオには行かず雑誌を見ながら。
———ここでヨガと出合うわけですね。
はい!
ヨガって呼吸を意識するんですよね。
今までダンスの前はストレッチをするのですが、1・2・3・4・5・・・・・ くるしい〜!
と、なっていたんです。
でも、ヨガはそれがなくて。
“ 吸って〜 はいて〜 ”を5呼吸くらい。
そうやってストレッチを深めてみたら、体がすごいが楽になりました!
以前と雲泥の差!
あと、ストレスと食生活が原因でお肌にぶつぶつが出ていたんですが、“ひゅっ”て、引いたんですよ!
———えー! 本当ですか!
ほんとほんと!
ヨガをはじめて数ヶ月かくらいで。
スタジオに通ったわけでもなく、寝る前にやっていただけなんですけど。
ほんとにすごい効果だったんですよ! びっくり!
———生まれ変わった!
はい、生まれ変わりました!笑
それで、もっと触れてみたいと思ったんです。
ヨガの世界に。
ヨガの最後ってサバーシャナ(屍のポーズ)をするんですが、そのときの状態って、自分は眠っているけど、自分の奥のほうにある何かが目覚めているようなそんな状態を感じるときがあるんです。
その状態になったとき、自分の奥のほうにいるまだ小さい何か(きっと本当の自分)が求めるところに行こう!って。
それが沖縄だったんです。
———どうして「沖縄」というキーワードが出てきたんですか?
ミュージカルで「ひめゆり」という舞台に出たんです。
戦争時のひめゆり学徒隊のお話しなんですが、その役作りのために沖縄に何度か足を運んでいて。
そのころの仲間と遊びも兼ねて行っていたんですが、沖縄の雰囲気とか、ひかりの感じが印象的で。
———沖縄のひかり?
太陽のひかりですね。
カーッと直射日光な感じ。
暑いんですけど…なつかしいような気がして
「あそこに帰りたーい」って。
沖縄病だな。笑
———ハワイ病みたいなね。笑 沖縄に呼ばれてた?
そのときの私はそう言ってたみたいです。
「沖縄に呼ばれてる〜」って。笑
前から聞いてはいたんですが、母親の先祖は沖縄から日本に来た人らしくて。
室町時代ごろに、下関から入って岡山に住み着いたそうです。
懐かしいって感じたのは、血がそうさせたんだなって思いました。
細胞に刻み込まれた遺伝子の記憶かも。
———何歳のとき?
23歳かな。
半年間、寮つきのリゾートバイトでホテルの仕事をして、そのあと1年半は那覇にいました。
そのときは免許も持っていなくて車の運転もできなかったので寮でヨガをしたり、本を読んだり、ひとりの時間を楽しんでました。
———沖縄! 海! わー! とはならなかった?
ならなかったですね。
2年いましたが、海には1回しか入らなかったんですよ〜。
海で歌ってはいましたけど。笑
———海に向かって歌う! おもしろいですね!
海は風がすごいんですよ!
顔がこんなんなるくらい(風で顔が引っ張られているジェスチャー)
ぶわーーーーーって!
そこで、風にあらがうように大きな声で歌える曲をなんでもいいから歌う。
風に負けまいと。笑
———沖縄の人もびっくりしたでしょうね。変わった子がきたわーって。
心配されて声かけられませんでしたか?
人、いなかったです。
———釣り人も?
だーれもいなかった!
たまーに犬の散歩にくる人くらい。
冬は風もさらにひどくなるし…、それでも、歌は歌うんですけどね。笑
ほんとに人の住んでない集落だったみたいです。
ほんと、あのころの私っておかしいなあ。
「死」にも、あこがれがあったし。
———え! それはまた個性的ですね!
ふふふ。
沖縄で過ごしたあのとき、たぶん、私一回死んだんですよ。
いろいろ削ぎ落として、生まれ変わったです、きっと。笑
誰の目も気にせず、自由に過ごせた。
冬の海で歌っても、みんなほっといてくれたから。
わたしって、本当に変な人だったな。笑

———今、沖縄に行ったら同じことできそう?
できないと思う。
もうそんなに吐き出すものがなくなってきた気がします。
———定期的に「吐き出したい」って波がきたりするのかも?
10代のころに岡山・東京でたまったものを20代で沖縄に吐き出しにいって、
今度はいつその波がくるか分からないけど、また吐き出したくなるときがきそう?
うーん、くるのかも?
わからないですけど、ヨガをして、自分の中で溜まるものを上手に処理できるようになってきました。
今までは自分のいやな部分を見ないようにしてたんです。
どろどろした部分とか、「くっそー」って悔しがってる自分を隠して、そういうものを人には見せないし、自分でも見えないようにしてたんです。
「泣いてないしー」って口を尖らせるみたいな。笑
そういうふうに遮をかけて見ないようにしてたけど、福井に来て衝撃的なことが多かったんです、大野に住むことで。
次回は、ヨガを通して、
自分のなかにあるモヤモヤをすっきりできるようになったアイさんの
インド珍道中「インドで怒り爆発!」をお届けします。
おたのしみに。
取材・文:吉田知奈(あわら市出身)写真:前田 龍央(福井市出身)
斉藤アイさん カタログ編
第2話「インドで怒り大爆発」
第3話「つるつるぴかぴかだったから」
第4話「究極のオーガニック」